時給300円の死神   藤 まる

「それじゃあキミを死神として採用するね」

ある日突然同級生の花森雪希から死神のアルバイトに誘われた佐倉真司。

初めは、本当に何を言っているのか分からない。

それに時給はたったの300円。早出も残業もあり、その分のお金は出ない。

シフトも選べない、有給もない、とことん最悪なアルバイトである。

男子高校生の主人公が『死神』のアルバイトに誘われ、クラスメイトと共に様々な

死者の声を聞き、あの世への旅立ちを見送るお話。

時間の流れ方が読みやすい作品だった。

展開についてはわかりやすく、会話で進む内容だったりと読みやすい本ではある。

主人公が人生に対して前向きになっていく過程は、自分に当てはめて読むと

なんだかぐっときた。

透明な本を再び開く場面は、こんなことが自分の身近にも起きているのかと考えてしまう。

大切なものや幸せは失ってから気づく。 

失う前に気づけること。

失っても幸せだったと思い出せること。

思い出せなくても、いつか思い出せると願うこと。

自分が誰かの記憶の中で生き続けること、そしてその人もいつまでも記憶の中に

自分を残してほしいと願うことが、幸せの最高の形なんだと思える。

読み終わった後は気持ちが優しくなりました。

最初の花森雪希の印象が、彼女が歩んできた今までの人生やあの明るさの意味を

知ると印象が変わってきた。

最後には主人公の佐倉真司と彼女を、もう一度再開させてあげたかった。

なぜか、銀河鉄道999の哲郎とメーテルの最後の別れのシーンを

思い出してしまうのは私だけかもしれない。

あなたにも、いつまでも記憶に残しておきたい大切な人がいるはずですよね。

作者 藤 まる

 2012年、アスキー・メディアワークス主宰の第19回電撃小説大賞に応募した『明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る』が金賞を受賞。

翌2013年に同作品が単行本化、作家デビューを果たす。

 同作品執筆の半年ほど前、会社での立場が危うくなったり、病気で入院したりするなど、嫌なことが立て続けに起こり、

何かしようと考えた結果執筆に至ったという

作品紹介

明日、僕は死ぬ 君は生き返る         

さとり世代の魔法使い             

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